「最近の労働安全衛生法令の改正と
熱中症対策の実際」

産業医が知っておきたい
「法令改正」「リスク要因」「現場対応」まで


2026-02-28 中野区医師会講堂
3区合同(新宿・中野・杉並)産業医研修会
日本医師会認定産業医研修会

佐上 徹(さがみとおる)

医師・労働衛生コンサルタント・産業医

Copyright Toru Sagami.

Good Condition Doctor✨ 講師略歴🌸

  • 医師・合同会社さがみ産業医事務所・新宿クレアクリニック
  • 非製造業の専属産業医を6年経験して独立。メンタルヘルス対応、健康経営の施策立案や従業員のヘルスリテラシー向上を目的とする研修の企画・実施に携わる。
  • 放射線診断専門医であり、大学病院での臨床経験を有する。国立がん研究センターでは、全国がん登録の研究員としてデータベース研究を経験。
  • 医療関連の情報技術の知識、臨床医・産業医の経験を生かし、人事担当者や産業医向けの研修会の講師としても活動。
  • メディックメディア「公衆衛生がみえる」の企画に参画。 大学院では公衆衛生学を専攻。
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到達目標・趣旨・ねらい
2026年「熱中症対策」をアップデート

  • 熱中症は職場で発生する代表的な健康障害
    • 労災や企業リスクの要因
  • 2025年 安衛則改正→ WBGT測定・記録・対応が事業者義務
  • 産業医は「測る → 判断する → 仕組みに落とす」責任を担う
  • 作業環境管理・作業管理・健康管理の3管理で抜け漏れなく対策
  • 熱中症対策のキモ=予防医学の考え方を応用可能

「困難は成長の機会」 - ジョン・F・ケネディ

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まとめ:最近の健康管理の動向

  • 労働安全衛生法・作業環境測定法 改正
    • 個人事業者 「個人事業者等の健康管理のガイドライン」
      • 労働災害防止の範疇へ
      • 自身で講ずべき措置(安全衛生教育の受講)
        ・業務上災害の報告
  • 化学物質による健康防止対策の推進
  • 高年齢労働者の労働災害防止の推進
  • 職場のメンタルヘルス対策の推進
  • 事業者の熱中症対策が義務化
  • 労働施策推進法「両立支援」が努力義務化(2026年4月)
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最近の健康管理の動向

化学物質による健康防止対策の推進

  • 化学物質の譲渡実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則
  • 個人曝露測定を作業環境測定の一つとして位置づけ、産業環境測定しによる適正な実施の担保
  • リスクアセスメント対象物(ラベル表示・SDS交付対象物質)
    • 1537物質(2025年8月)→779物質追加(2026年4月予定)
  • 「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」
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最近の健康管理の動向

高年齢労働者の労災防止指針策定について

  • 高年齢労働者(60歳以上)の労災が増加中、法改正で事業者に対策努力義務
  • 指針は「体制整備・環境改善・健康把握・作業調整・教育」が柱
  • 転倒・腰痛防止の設備改善、照明・床面整備、危険箇所可視化
  • 健康診断+筋力・バランス測定で個別対応
  • 作業負荷・休憩見直し、補助具活用、管理者・本人教育
  • 通称「エイジフリーガイドライン」
    • 「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」
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最近の健康管理の動向

職場のメンタルヘルス対策の推進

  • 従業員50人未満事業場にストレスチェックが義務化

    • 努力義務から義務化
      • 改正法令2025年5月14日に公布
      • 準備期間を経て、3年以内に施行
  • 「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」

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最近の健康管理の動向

熱中症対策義務化:2025年6月労働安全衛生規則改正

  • 気候変動で職場の熱中症災害は増加傾向
  • 2024は休業4日以上1,195人で過去最多
  • 死亡は3年(2022-24)連続30人超、労災死亡の約4%
  • 原因は初期症状放置や対応遅れ
  • 早期発見・重症化防止のため事業者に新たな措置を義務化

対象となる作業と環境

  • 作業環境がWBGT 28°C 以上 または 気温31°C 以上になることが見込まれる作業
  • その作業が続けて1時間以上 または 1日4時間を超えて行われるもの
2025-05-20 基発0520第6号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」

熱中症が今、産業現場の最優先リスクになっている

  • 記録的猛暑:過去10年で最も暑い夏が連続
  • 夜間でも気温が下がらない「熱帯夜」が増加中
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熱中症による死亡者 1994-2021年 5年移動平均
熱中症対策推進検討会資料2022-11-28

熱中症搬送者が全年代で増加している

  • 2024年
    • 熱中症搬送者:9.7万人(全国・総務省消防庁)
    • 熱中症による死亡 初めて 2000人を超える(全国全年齢・人口動態統計)
  • リスク要因は小児・高齢者であるものの…
    • 特に労働現場では「中高年男性」が最多
  • 2025年
    • 熱中症搬送者:過去最多(約10万人) 東京1・全国
    • 2025年夏、史上最も暑かった 平年より2.36度高く2
東京消防庁:熱中症による救急搬送人員と気温・WBGT(2024年6-9月)

将来予測

環境省検討会「日本国内の地球温暖化による影響」

  • 今後も、平均気温の上昇と極端な高温の頻度の増加が予測
  • 多くの地域で猛暑日や熱帯夜の日数は増加すると予測
  • 増加予想:気温上昇で心血管疾患の死亡+2030~2050年に暑熱で高齢者の死亡
    • 東京都23区:熱中症リスクが2.4倍(2050年代vs.2000年代の比較)
  • 気温上昇に伴い、日本各地でWBGTが上昇する可能性が高い
    • 西日本:WBGTが31℃以上になるため
      「原則運動中止」の日数が8月中20日を越えることが予測

✋私見:「夏の甲子園⚾終了」のお知らせ?

出典: 日本の気候の現状について筑波大学計算科学研究センター教授 日下博幸氏 2022年11月28日 (環境省第1回 熱中症対策推進検討会)

2024年の熱中症による死亡労働災害の事例

  • 総数は31件。うち被災者は男性28件、女性3件
  • 発症時・緊急時の措置の確認・周知していたことを確認できなかった事例が20件
  • 暑さ指数(WBGT)の把握を確認できなかった事例が24件
  • 熱中症予防のための労働衛生教育の実施を確認できなかった事例が14件
  • 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病や所見を有している事が明らかな事例は21件

✋私見:安全衛生管理者・産業医がもっと関与していれば防げた事例も多い?

2024年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
職場で何する?要点

職場での熱中症予防

  1. 熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための体制整備
  2. 熱中症の重篤化を防止するための措置手順の作成
  3. 上記体制や手順の関係作業者への周知

必ず行うこと 「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の一貫

  1. 暑さ指数(WBGT)の把握と値に応じた熱中症予防対策を適切に実施
  2. 作業を管理する者及び労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行う
  3. 糖尿病、高血圧症など熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対して医師等の意見を踏まえた配慮を行う
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🔑熱中症対策のキモ=予防医学の考え方を応用可能

3次予防:問題発生時の迅速な対応(治療行為そのもの)

  • 発症時・緊急時の措置の確認・周知 → 応急措置+救急搬送

2次予防:ハイリスク状況の早期発見+早期対処=ハイリスク戦略

  • 暑さ指数(WBGT)の把握+対処(休憩や作業中止)
  • 労働者の基礎疾患の把握+リスク要因への対処

1次予防:全体に対する対策=ポピュレーション戦略

  • 熱中症予防のための労働衛生教育

⭐事業者+労働者自身が「職場の安全と健康」を確保する担い手という意識

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2025年から熱中症対策が「義務化」された

  • 労働安全衛生規則が改正(2025年4月施行)
  • WBGT測定・把握と体制構築が新たな義務
    • 違反時は懲役・罰金あり

✋私見:日本の職場=罰則回避で渋々動く事業者・労働者が多い印象

  • 労働者・人事労務担当者・事業者のリテラシーに大きく依存
    • ここが「産業医の関与」の見せ所?
  • 「義務だからやってください」→「思わず対策したくなる」仕掛け
    • 労働者・人事労務担当者・事業者と産業医で動機・目的を共有(意識合わせ)
    • 熱中症回避だけでなく、暑熱時でも成果が出せるような職場・働き方を実現
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「WBGT測定・把握と体制構築が新たな義務」

  • WBGT:暑さ指数(湿度・気温・輻射熱)

    • 測定だけでなく「対応ルール」と連動させる必要あり
    • 測定器の購入だけでは対策にならない
    • 測定 → 記録 → 作業中止基準との連動が必要
  • 測定を怠ると企業も罰則の対象になる

    • 6ヶ月以下の懲役 or 50万円以下の罰金
    • 体制づくりが「未実施」だと災害時に企業リスク大

✋私見:問題点=1. WBGTが分かりにくい+ 2. 体制構築に時間とお金が必要

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暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)が分かりにくい件

私見:「暑さリスク指数」という言い方を推奨したい

  • 「暑さ指数」は客観指標ではなく自分の主観的「暑さ」を基準に思いがち?
  • 「WBGTだぶりゅびーじーてぃー」では語感が超絶に悪い😠
  • 単位「℃」がであり、気温・室温と区別しにくい
    • 「だぶりゅびーじーてぃーが32度なので作業中止です」伝わる?

⭐私見:産業医が現場で行うこと

  • ⭕職場で担当者+労働者に「暑さリスク指数」を適切に理解してもらう
    • 咀嚼してわかりやすく説明。担当者+労働者の理解+行動が必須
  • ⭕測定把握と体制構築を助言する立場 → カイゼンサイクルを回す
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産業医のミニマム知識

暑さリスク指数WBGT(湿球黒球温度)

  • WBGT(Wet Bulb Globe Temperature): 気温 湿度 輻射熱を評価するリスク指標

    • 作業中止や休憩の判断に用いる
  • 黒球温度計の設置・活用が推奨

    • 屋外では直射日光のある環境で計測
    • 屋内では風通し・日射条件に応じて計測
  • 環境省の基準では、WBGT 28℃以上で「厳重警戒」、31℃以上で「危険」

  • 熱中症のWBGT予測因子。「暑さ指数(WBGT)」は予防行動のトリガー

  • WBGTがわかりづらい→⭕「暑さリスクレベル1〜4」などに言い換える周知

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暑さリスク指数 WBGT値1
(暑さリスクレベル Heat Risk Level)

レベル 暑さ指数
WBGT値
区分 注意事項
1️⃣ 24以下 注意🟢🌤️
caution
軽い熱中症リスク、適度な水分補給
2️⃣ 25〜27 警戒🟡☀️
alart/warning
積極的に水分補給・休憩を意識
3️⃣ 28〜30 厳重警戒🟠🔥
severe alart
激しい運動・作業は中止を検討開始
4️⃣ 31以上 危険🔴⚠️
danger, extremly
作業中止・屋内退避が基本
日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)より改編
産業医からの伝達例

労働者+担当者のミニマム知識✨

☀️ 暑さリスク指数 WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)

  • 気温・湿度・日射し(太陽光など)をまとめた「暑さの総合リスク指標」
  • 気温だけでなく、湿度や日射しが加わると熱中症リスクは急上昇
  • 「熱中症リスクを知る目安」になる

✔️なぜ大事?

  • 熱中症は「気温30℃以下」でも発生

✔️どう知る?どう測る?

  • 熱中症予報(スマホ・テレビ…) + 職場では黒球温度計で計測
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体制構築に時間とお金が必要な件

産業医は「法令対応+現場実装」を指導する立場

  • 衛生委員会、職場巡視、教育での介入が重要
  • 労働安全規則に則った指導は「法的根拠」を持つ
    • 機器の購入だけ、測定だけでは意味がない
    • ゴール:労働者の「熱中症の予防」が実現
    • ゴール:労働者+会社側の自律的なPDCA

🔑2026年の夏まであと3か月

  • 単発な介入・情報提供でなく、継続的な話題にしてカイゼンを指揮
  • 担当者を「動かすそそのかす」知恵をつけて工夫をしよう✨
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熱中症対策も「3管理」で考えると「抜け漏れ」なし

作業環境管理 × 作業管理 × 健康管理 × α で対策!

  • 作業環境管理:労働者が暴露する有害因子(熱)を環境から低減させる
  • 作業管理:人と仕事のやり方を変える
  • 健康管理:作業者の体調・リスクを把握し、暑熱順化や異常時対応を行う
  • 🆕労働衛生教育:労働者への教育・訓練、リスク認識の向上
  • 🆕総括管理:産業医・衛生委員会・管理責任者による安全文化づくり
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熱中症対策の作業環境管理の原則

  • ルール制定と実行
    • 測る → 現場改善
      • 暑い・レベル高 → 中止・休憩
      • リスク下げる対処 → 作業計画・シフト管理

カイゼンサイクルでリスク低減を継続して、発症・重症化を予防

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作業環境管理(1)暑さリスク指数によるリスク把握

  • WBGT(暑さリスク指数)を用いて作業環境の暑熱負荷を定量評価
  • 厚生労働省や日本産業衛生学会の 作業強度×気温」の許容範囲を利用
  • WBGT計を現場・各作業員に設置
    • リアルタイム監視 → アラームで作業中断や休憩指示

現場実装時の問題点:

  • 「測定だけして終わり」 → レベルに応じて行動基準を策定・実行
  • アラームが頻繁でOFF → 厳重警戒・危険のレベル感で対処行動を取るよう教育
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作業環境管理(2)-1 暑熱環境の改善

  • 換気・送風:大型ファン・スポットクーラーで熱気を排出
  • 遮熱:屋外なら日よけ、屋内なら遮熱カーテン、屋根の断熱
  • 熱源管理:炉や機械の熱放散を減らす、断熱材で遮熱
  • 作業場所の温度差解消:局所的な熱だまり(輻射熱)を取り除く

現場実装時の問題点:

  • 暑熱環境が改善できない職場(警備員・土木建築・運搬配達)はどうする?
    • 冷却グッズの常用:冷却ウェア・ファン付きベスト・ネッククーラー他
    • 水分補給のルール化:「喉が渇く前に飲む」を徹底、管理者が声かけ
⭐スーパーマーケット 「従業員の健康管理のため勤務中に水分補給を行ってます」
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作業環境管理(2)-2 休憩の確保(休憩所・休憩時間)

  • WBGTや作業強度に応じ、定期的かつ十分な休憩を設ける
  • 休憩所:屋外なら風通しがよく涼しい場所(日陰・冷房・送風あり)
  • 作業場から近い場所に確保。すぐ退避できるようにする。
  • WBGT 28℃以上では15〜30分ごとの休憩が目安。
  • 水分補給・必要時に身体を冷却する物品(冷却水+氷+ベッド・担架)
  • 高齢者・暑熱未順化者には、より頻回な休憩を考慮

現場実装時の問題点:

  • 休憩所が遠方(移動に時間)・休憩時間が形式的/短すぎる
    • 遠方なら移動時間も考慮して休憩時間を確保
    • 水分補給+実質的な体温低下+疲労回復=休憩の目的にする
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作業環境管理(3) 作業計画・シフト管理

  • 作業時間短縮・分割:暑熱ピーク時(11〜15時)の作業を避ける
  • 交代勤務・ローテーション:同じ人に連続して高負荷作業をさせない
  • 休憩計画:WBGT基準に応じて定期的に休憩を設定
    • 例:WBGT 30以上なら 1時間あたり15分休憩

現場実装時の問題点:

  • 人員不足・納期のプレッシャー・効率低下のおそれから、対処行動をしない
  • 熱中症対策の「休憩」は「労働時間」にカウント?
    • 実務上は安全確保のための「作業一時中断」として扱う
    • 現場から出られず/作業服を着たまま/指示に従って休憩 → 「作業待機」
    • 指揮命令下の作業待機であれば労働時間として賃金支払いが必要
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作業環境管理(4) 運用ルール制定と実行

  • 基準明文化:暑さリスク指数による作業中止ライン・休憩時間・水分補給ルール
  • 作業計画連動:作業強度や時間帯に合わせたローテーションやシフトも併記
  • 周知徹底:ポスター掲示・朝礼共有・教育研修で現場に浸透
  • 現場実行:責任者が判断し、アラート時は例外なく休憩・中止を指示
  • 実施確認:休憩・水分摂取状況を記録、チェックリストで見える化
  • 異常対応:体調不良時の報告フローと救護手順をマニュアル化

現場実装時の問題点:

  • ルール形骸化:「忙しい」「大丈夫」と現場判断
  • 浸透不足:新人・派遣スタッフに伝達漏れ。ベテランはリスク軽視
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熱中症対策の作業管理

  • 作業時間の調整:猛暑時の作業回避、早朝・夜間シフト
  • 作業強度の分散:重作業は短時間ローテーション、軽作業と組み合わせ
  • 休憩スケジュールの設定:暑さリスク指数に応じた休憩回数・時間を決める
  • 水分補給ルール化:作業前・中・後に定期摂取、声かけ、チェックリスト
  • 測定値に基づく、休憩時間の設定・作業中止基準の実行
  • 教育と指揮系統:症状の早期発見訓練、異常時の即中止・救護手順を明確化

現場実装時の問題点

  • 人員不足(交代要員・スキル不足)による、水分摂取・休憩の不徹底
  • 異常時・緊急時の対処遅れ(オーバートリアージを許容)
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熱中症対策の健康管理: 個体側のリスク要因
→ 全員共通:日々の体調管理で予防する

  • 年齢(高齢・小児)、肥満・筋肉体質
  • 暑熱順化していない(不慣れ・長期休み明け)
  • 糖尿病・心疾患・腎機能障害などの持病(発汗・循環調節が働かない)
  • 薬物服用(向精神薬・利尿薬・降圧薬・SGLT-2などを服用
  • 服装・マスク着用⚠️1

⭕普段の体調管理で予防可能 ⚠️「アルコール摂取は水分補給に含む?」

  • 朝食欠食・アルコール摂取・寝不足・疲労蓄積・過度ダイエット
  • 脱水・下痢・発熱(体内水分・体温調整力が低下)
1:「夏場については、熱中症予防の観点から、マスクを外すことを推奨」マスク着用の考え方の見直し等について(2023-02-10)

熱中症対策:日々の体調管理

✅ 1次予防的(発症そのものを防ぐ)

  • こまめな水分・電解質補給(のどが渇く前に飲む)
  • 暑熱順化(短時間からの慣らし作業)の推奨
  • 睡眠不足・飲酒翌日の作業回避など生活習慣への助言
  • 体調セルフチェック習慣化(例:めまい、倦怠感の有無)
  • 長時間作業の禁止・スケジュール調整
  • 涼しい作業服/空調服の導入検討
  • 冷却グッズの配布・利用・整備(氷嚢・クールベスト・ホース・バケツ等)
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「暑熱順化(Heat Acclimatization)」を知っておこう

  • 体が少しずつ暑さに慣れて、熱中症になりにくくなること
  • 1-2週間で完成、2-3日の不活動で効果減退
    • 発汗開始早期化・汗量増加・Na損失減少
    • 皮膚血流増加・心拍数低下で循環効率改善
  • 初日は作業量50%から段階的に負荷増
  • 1日60〜90分の軽〜中等度活動を継続
  • 高齢者・基礎疾患・新人は個別順化支援
  • 冷房職場→屋外復帰時は再順化を考慮
  • 指導例:急に頑張らず、汗をかく練習を段階的に
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熱中症対策:日々の体調管理

🚑 2次予防的(早期発見・早期対応)

  • 朝礼や作業前の体調申告制度(申し出しやすい雰囲気作り)
  • 同僚による見守り体制(バディ制)の導入
  • 「顔が赤い/汗が止まっている/ぼんやりしている」などの異変の察知訓練
  • 体調不良を訴えやすい職場文化の醸成(上司の理解・見本)
  • 熱中症発症歴のある作業者への個別対応(重点観察・配置換え)

🔥 3次予防的(通報・連絡・応急措置)

  • 涼しい場所への搬送・冷却・救急要請の周知…
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⚠️体調不良・疑わしいとき

  • ⭕作業中止する・休む・休ませる
  • ⭕周囲に申し出る・申し出ていい雰囲気作り
  • ⭕水・スポーツドリンクを飲む・飲ませる
  • ⭕冷やしてもらう・冷やす
    • ホースで水道水ダイレクト
      • 「寒い」と感じるまで
  • ❌ 一人にする・帰宅させる

🔍Q. 熱中症が疑わしいとき、どんな症状が出る?

🟡 軽度(I度:現場で対応可能)

  • めまい・立ちくらみ(ふらつく) 筋肉のこむら返り(脚がつる)
  • 大量の発汗(止まらない汗)

🟠 中等度(II度:病院受診が必要)

  • 頭痛・吐き気・嘔吐 強いだるさ(倦怠感)、判断力の低下
  • 皮膚が赤く乾いてくる(発汗停止) 高体温(体が熱く、冷やしても下がらない)

🔴 重度(III度:緊急搬送対象)

  • 意識障害(応答が遅い/もうろう/呼びかけに反応しない)
  • けいれん・手足の異常な動き
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⚠️熱中症対策:「なんか変」なとき 並行して行う

  • ⭕ためらわず救急車を呼ぶ
    • 水が飲めないとき
    • 呼びかけに応じないとき
    • 体がやたらと熱いとき
  • ⭕水道水+ホースで直接冷やす+冷やし続ける
  • ⭕人を呼ぶ 大勢の知恵を借りる
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Q. 暑さ対策の物品・装備、何がある?

  • 空調服®️・冷却ウェア・ファン付きベスト
    • 注意:ファン別売りの製品あり
    • 注意:バッテリー・ファンは高性能のものを選択
    • バッテリーは8時間持続するものあり
  • 暑さ対策用ヘルメット
    • 熱の吸収を抑える「ヒートバリア™️」 風が流れる 「AEROMESH®️
  • スポットクーラー
    • 作業環境を適切な温度に保つ⭕

暑さ対策ツールの利用 → 集中力を高め、安全で効率的な作業が可能⭐

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Q. 夏季は、水分摂取はどれくらい必要ですか?

  • 1日あたり体重の数字の35-45倍程度(35-45 ml/kg/day)
    • 発汗分も加味した数字である
      • 体重50キロ:1日 2L以上
      • 体重75キロ:1日 3L以上

参考 「日本人の食事摂取基準2025」水の目安量

  • 男性 2,600-2,750 mL 女性 2,200-2,350 mL

🔁「30分に1回・コップ1杯(200mL)8時間の勤務中に16回飲む」=3.2L

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Q. 水分摂取量?(勤務中+労働者1日 目安)

🐟作業条件 水分補給の目安
軽作業(屋内) 1時間に1回・200mL程度
中~重作業(屋外) 20〜30分ごとに200〜250mL+塩分
高温多湿(WBGT 28℃以上) 最低でも1時間あたり500mL以上+塩分
🐋作業内容/環境 1日あたりの推定必要量1
屋内軽作業(冷房あり) 2.5〜3.0L
屋内作業(蒸し暑い) 3.0〜4.0L
屋外中等度作業(WBGT 28℃) 4.0〜5.0L
屋外重作業(WBGT 31℃以上) 5.0〜6.0L以上(条件によっては最大8L)
1: 筆者作成:暑熱環境での活動時(建設・農作業・物流など)環境省・スポーツ庁・WHO等の報告をもとにした推定値

Q. 熱中症対策、塩分摂取はどれくらい必要ですか?

  • 基本的に必要ない(日本高血圧学会による、次ページに詳細)

「塩飴」では根本的な熱中症対策にならない1

  • ⭕まず水分摂取を適切に行う
  • 塩分は熱中症対策に必要だが、飴をなめるだけでは不十分。現状は「対策商品」として過剰に宣伝されており、正しい知識の普及が求められる
    • 職場で「やってる感」の儀式としては有効もしれないが、医学的にはまったく無効
  • カバヤ食品 塩分チャージタブレッツ スポーツドリンク味
    • 1個 =食塩相当量0.119グラム
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情報提供

2025年猛暑の夏における水分と塩分の取り方について
~熱中症を防ぎ、血圧を健康に保つために~
日本高血圧学会1

  • 水分は、のどが渇く前からこまめに。1日あたり 2L以上
  • 日本人は、塩分を取りすぎ
  • 大量に汗をかいた場合でも、普通の食事を取っていれば塩分を増やす必要はない
  • スポーツドリンクや経口補水液の飲み方には注意:
    • 高血圧で薬を飲んでいる方
    • 心臓や腎臓の病気がある方
    • 普段から減塩に取り組んでいる方

Q. 日本人1日あたり食塩相当量摂取1に一番近いのは?

  • 1️⃣ 6グラム
  • 2️⃣ 8グラム
  • 3️⃣ 10グラム

Q. 「ポカリスエット」500ml2の食塩相当量に一番近いのは?

  • 1️⃣ 0.6グラム
  • 2️⃣ 1.2グラム
  • 3️⃣ 1.8グラム

Q. 高血圧ガイドライン1による 高血圧患者の1日あたりの食塩相当量目標は?

  • 🍌 4 グラム未満
  • 🍇 5 グラム未満
  • 🍎 6 グラム未満

Q. WHO2の推奨する、健康な成人の1日あたりの食塩相当量目標は?

  • 3️⃣ 3 グラム未満 4️⃣ 4 グラム未満 5️⃣ 5 グラム未満

Q. 経口補水液(オーエスワン)は、いつ摂取?

  • ⭕軽度から中等症の「脱水」時1
    • 感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱
    • 高齢者の経口摂取不足
    • 過度の発汗
    • 脱水を伴う熱中症
  • ❌症状がなく、自力で水が飲める人

経口補水液オーエスワンは「病者用食品」

  • 脱水症で不足する電解質を補給するため、電解質濃度が高い
  • オーエスワン500ml:食塩相当量1.5グラム ← ポカリスエットの2.5倍
情報提供

職場における
熱中症予防情報

https://neccyusho.mhlw.go.jp/

「働く人の今すぐ使える
熱中症ガイド」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133_00001.html

情報提供

熱中症の予防のリーフレット
(多国籍版)

質疑・感想・まとめ🍒 具体的に何?

  • 知った・気づいた ・印象に残った・きょうから取り入れる
  • ⭕誰かに伝える🌼
  • ❌気づき・学びがあった ❌興味深かった ❌わかりやすかった

2025-03-04

2025-03-04

2024-07-07

図:東京の熱帯夜の推移グラフを挿入

東京の熱帯夜真夏日の推移

東京の熱帯夜ヒートマップ

熱中症による救急搬送者数が過去最多を更新!

令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨の特徴およびその要因等について

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/heat/toukei.html

職場における熱中症による死傷者数の状況(2015~2024年)

熱中症による死傷者数の業種別の状況(2020~2024年)

スライド 4

休憩するカー https://www.srscorp.co.jp/news/promax-20250618/

DICプラスチック

1: https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001098923.pdf

食塩摂取量の平均値は 9.8 g であり、男性 10.7 g、女性 9.1 g である。この 10 年間でみると、. 男女とも有意な増減はみられない。

100mlあたりの栄養成分表示 エネルギー 25kcal、タンパク質 0g、脂質 0g、炭水化物 6.2g、食塩相当量 0.12g、カリウム 20mg、カルシウム 2mg、マグネシウム 0.6mg